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氷河

氷河からは5分に一度氷が崩れ落ちてきて大きい時には
一軒家くらいの大きさが崩れ落ちることもあり海は津波のような
波が押し寄せるためカヤックでは近寄れずテントを張った地点から歩いて
近寄るんですけどこの氷河は長さが横に1KMあります。

氷河の両脇からは大量の解け水が川のように流れていて橋なんて
かかっていないその川を歩いて横切りたどり着いた舞台のような
丘から氷河の前で撮影した一枚です。

前々回のテントの写真ではここまで近そうですけど氷河まで800mあります。

その晩もここでテントを張る予定でした。
前方は氷の壁なのでクマも出てきそうにないし。

その晩夕食を作っていると目の前約30mを
非常に大きなカップクのいいブラックベアが横切りました。

何でここにクマの食べ物なんてなさそうやのにいるん?」と

独り言を言ってクマの様子を見てると、
こちらには全く興味がないらしくチラっと
こっちを見るとそのまま氷河の方へ。

でも先は氷で行き止まり、
ということはこちらへ帰ってくるということです。

クマ対策としてはベアスプレーとベアバンガーという火薬を
持ってますがその二つを準備してさっさと夕食を済ませ、
クマ対策を考えることに。

まず距離10mから15mでの戦いに備えて投げやすそうな
石を35発テントの周りに並べいつでも発射できるように準備、
接近戦になるとベアスプレー噴射距離3mほど
竹ヤリのようなパドルの長さ2メートルほど。

あと自衛隊のように威嚇用のベアバンガーという火薬。

自分は体格的に細く日本の関取のようにツッパリや押し倒すというほど
パワーはないのでパドルは予備パドルがあり
カヤック用はフタツに中央から割れるから一本は
細身のブルース・リーがやっていたヌンチャクにしてはどうかと
フタツに離したパドルにロープを付けヌンチャクのようにして練習しようとしたら
あまりの柄の部分(パドル)の長さに振り回してる間に
パドルが自分の頭に当たり自滅するなーと思い、

これは撤回し昔日本軍がアメリカ軍に対して
竹やりの練習をずっとしていたなと
思い返しやはり長いパドルで応戦することにしました。

お互い傷を負わない為にもクマには出てこないよう祈りながら
待ってましたが結局その夜は現れずテントで休むことに。

こんなに準備したのは2000年のユーコン川単独でカヤックを漕いで
ドーソンシティへ行った時以来です。

翌日もその氷河の前でテントを張りたかったのですが、
クマが食事をしに来たところに邪魔もの(自分)が現れるとクマも
いい気はしないし、落ち着いて生活できないんだろうなと
逆の立場だったらと思い
翌朝一番にその氷河の前から去ることにしました。